223人のお金持ちと、128人の貧乏な人の人生を5年間にわたって追跡・調査した研究がある。
研究をおこなったトム・コーリー氏は、二つの差を「習慣」であったと結論づけた。
それほど習慣は人生を左右する。
どれほど小さなことでも、よい習慣を身につけていれば、成功への近道を生み出したり、驚くほどに人生や仕事の質を高めてくれる。
5人の天才たちの小さな習慣をご紹介しよう。
1.パトリック・コリソン
アイルランド出身のコリソン兄弟は、シリコンバレー史上最年少で億万長者になった企業家だ。
コリソン兄弟が億万長者になったのは、兄のパトリック・コリソンが28歳、弟のジョン・コリソンは26歳のときだった。
二人が設立したStripeという会社は、PayPalのようなオンライン決済サービスを提供している。
Stripが提供される前、米国のオンライン決済サービスといえば、ほとんどの人がPayPalというほどシェア率がすごかった。
しかし、お店側がPayPalを利用するには、作業にとても手間がかかった。
そこに目を付けたコリソン兄弟は、Stripeを導入する手順やシステムを、非常にシンプルで簡単なものにした。あまりITにくわしくない経営者の目には魅力的にうつり、Stripeは一気に注目を集め、急成長。
コリソン兄弟が会社を急成長させられた理由には、ひとつの習慣があった。
自分の残りの寿命を常に確認する

パトリック・コリソンの自宅のパソコンの画面には、残りの寿命のカウントダウンが表示されている。寿命を80年と仮定して、どんどん時間がへっていくのだ。
パトリックはカウントダウンを何度も見て、時間を大切にする習慣をつけている。
「時間が無限ならテレビなどを楽しむでしょうが、人生の時間は限られています。」とパトリックは語る。
Stripeの構想を思いついたのも、PayPalを自身が利用したとき、作業に時間がすごくかかったからだという。
なんでも時間を大切にする習慣が、「20代で成功をおさめる」という記録的な速さにつながった。
「またスマホゲームに時間をつかってしまった」「最近ダラダラ過ごしている」と焦りを感じているなら、自分の寿命の残り時間をはかる習慣を実践してみよう。
2.リチャード・ファインマン
リチャード・ファインマンはアメリカの物理学者であり、量子力学の発展に大きく貢献した。1965年にはノーベル物理学賞を受賞している。
私たちが見ている世界は、リンゴが木から落ちるように、すべての物体がひとつの経路をたどって動く。しかし、目に見えない分子や原子などの粒子はひとつの経路では動かない。
野球でボールを打ったときのように左に飛ぶか、右に飛ぶか。ホームランになるかなど可能性がある。
リチャード・ファインマンは、この可能性をすべて考慮して合算する方法を作り出した。
もとよりファインマンはいろいろな可能性を考えてしまう性格で、日常生活でもかなりの優柔不断だった。そこで彼は迷っている時間をムダだと考え、ある習慣を身につけた。
小さな問題はあらかじめ答えを決めておく

ファインマンが大学生だったとき、食堂では何種類ものデザートが選べた。ファインマンはいつも「どれにしよう」と迷い、かなりの時間を浪費していた。
あるとき「こんなつまらない問題で悩むのは時間のムダだ」と思い、「デザートは常にチョコアイスを食べる」ことを自分に課した。
そして日常における小さなことの選択をひとつに統一し、決定したら絶対にくつさえがないことを決めた。
アインシュタインも服に悩む時間をムダだとして、毎日同じ服を着た。スティーブ・ジョブズも同じく。
小さな習慣ではあるが、余計なことに悩まされなくなると、もっと重要なことに時間や集中力を費やせる。
あなたが「あるもの」を前にして悩む時間、本当に人生にとって大事だろうか。
3.マリッサ・メイヤー
マリッサ・メイヤーは、今のGmailやGoogle検索、GoogleMapなどのプロダクトを作った女性エンジニア。
スタンフォード大学を卒業し、Googleに入社。入社して6年後には副社長になった実績をもち、「シリコンバレーで最も成功した女性」と評されている。
マリッサ・メイヤーは「ロボットのようだ」といわれるほど、社交的ではなく、仕事に感情をもちこまない。そんなメイヤーは大事な意思決定をするとき、感情に左右されない、自分なりの計算をする習慣をつけている。
重大な意思決定のときのチェックリストを作る

検討していることを、いろいろな要素から考えて点数をつけ、合計点が高いほうを選ぶようにしている。
メイヤーは進学先を決めるときも、チェックリストを作り、表計算ソフトをつかって合計点を出したという。
数値でなくても、自分の大事にしているリストをいくつか挙げて、当っているかどうか、〇や×をつけて、〇が多い方を選ぶのもいいかもしれない。
人は重大な意思決定のときこそ、大事なところを見落としがちになる。
チェックリストをつかうことで、複雑な問題もシンプルに見えてくることがあるだろう。
4.アガサ・クリスティー
アガサ・クリスティーは「そして誰もいなくなった」などで有名なイギリスの推理小説家だ。累計の売上は20億部以上。
どんでん返しの結末や緻密なトリックはとても有名であり、「推理小説の女王」と知られている。
アガサ・クリスティーには、小説を書くとき、ある習慣があった。
重要なものから始める
小説を執筆するとき、冒頭ではなく、殺人シーンから書いたという。犯行がどうおこなわれたかをくわしく書いた後に、前後のストーリーをつくる。
クリスティーがこの手法をつかった理由は、推理小説の一番重要なところが「殺人シーン」だと考えたからだ。
推理小説は未知の犯人によって、不思議な方法、または不可能と思えるような方法で殺人事件が起こる。「誰がやったのか」「どんな方法をつかったのか」「なんのために」という推理が読者をハマらせる。
クリスティーは、そういった興味の引き方がどの作家よりも優れていたため、評価された。
仕事の優先順位がわかっており、重要なところから始めたからクオリティが高くなったのだ。
著書「7つの習慣」でも、「重要なものを優先する習慣」は、人生を成功させるために必要な習慣のひとつだと書かれている。
会社で企画書やプレゼンも頭から書く必要はない。一番伝えたい部分や大事な部分から書き始め、最高のものに仕上げよう。
5.アレクサンダー・フレミング
アクレサンダー・フレミングは、世界初の抗生物質『ペニシリン』を発見した、イギリスの細菌学者だ。
抗生剤によってたくさんの人が救われており、「20世紀におけるもっとも重要な100人」の1人に選ばれている。1945年にはノーベル賞を受賞した。
しかし、彼には「抗生物質を発見して多くの人を救おう」という使命感はない。ただ細菌が好きで、細菌を毎日観察して遊んでいるときに偶然、ペニシリンを発見した。
自分が楽しむことを目標にして仕事をする

フレミングは毎日、細菌を使って遊ぶ習慣があった。細菌で文字を書いたり、絵を描いたりした。
また風邪を引いたときは、自分の鼻水をほかの細菌と混ぜてどのような反応があるかを観察したりもした。どれも医学的な発見が目的ではなく、「ただ面白そうだったからやってみた」。
ペニシリンを発見したときは、フレミングが研究室の細菌サンプルをちゃんと隔離せず、休暇に出てしまったことが原因。
フレミングが休暇から帰ってくると、細菌サンプルにはカビが生えていた。普通の研究者なら「こんなミスをするなんて…」とカビが生えた細菌を捨てる。
フレミングは、どんな物質が生えているのだろうかと気になって、めちゃくちゃになったサンプルを観察した。そこで、カビが細菌を殺していることを発見した。
この発見は、細菌が好きで研究を楽しんでいる人しかできなかっただろう。
フレミングのほかにも、天才の功績をみると、とくに使命感はなく、遊び感覚で成功したものが多い。
中国の思想家、孔子もこのように言う。
「知る人は好む人に勝てない。好む人は楽しむ人には勝てない。」
フレミングの習慣のように、楽しんで遊ぶように仕事をする人が、最も優れた仕事をするのだ。
参考書籍:
イラスト:Pixbay